別に是枝裕和や園子温の事を言ってる訳ではないが、
昨今の若手監督の作品は、つたない社会正義や映画への愛が溢れ返ってる割に、
基本的デッサン力を欠いていてゲッソリ。
暖かく見守る酔狂な評論家やアホな客も多いらしいが、
老い先短かい初老男からすれば、サンピン監督や映画芸術の将来など知った事じゃない。
今を生きる客に入場料分のひとときを。
『童貞放浪記』で手堅い演出力とギャグセンスを見せた小沼雄一が、
『結び目』では、”楷書体”も並々ならぬ技量だという事を示す。
この素材にしっかりと笑いをぶち込む自信にも敬服。
次は由利徹主演の怪作、『カックン超特急』みたいな作品を期待したい。

 ――塩山芳明(エロ漫画編集者)


本性を剥き出し、激情した女の姿。
綺麗で、強くて、怖くて、いとおしい。
キャメラはただ静かに、その姿を撮らえる。
作意の感じられないカメラワーク。
美しいフレーミング。
背徳の物語が気持ちいい。

 ――ふじもと光明(映画カメラマン 『すんドめ』シリーズ)


緑の、森の美しさにのみ込まれそうになる。
これは、日常の一部を切り取ったふりをした狂気の物語だ。

 ――Velma(モデル・パフォーマー)


まるで血が通ったような映像。どうしてだろうかと考えてしまう。
すばらしい芝居のためか?シンプルな絵だからか?
きっと沈黙を生かした音の演出がすばらしいからだ。
ぞくぞくする空気をこの映画からは強く感じる。

 ――佐々木友紀(映像作家 『ちょちょぎれ』)


小沼監督作品は導入からラストカットまで 、登場人物を見つめる視点にブレがない。
それは、『自殺マニュアル2』から『童貞放浪記』まで一貫してることだ。
キャラクターの生と死や滑稽さを描くことにきっちりと責任を取れる人なのだ。
あたりまえのことだが、小沼監督はそれができる。
その先には、あの頃、夢中になった日本映画の匂いがあるのだ。

 ――廣田正興(映画監督 『代々木ブルース 最終回・地図とミサイル』)


あなたがトンプスン好きなら必ず見てほしい。
フリークなら必ずニヤリとする台詞があるがそんなことは些細なことだ。
狂った保安官も入れ歯の殺し屋もファムファタルたる売春婦も出てこないが、
スクリーンに映っているのはまぎれもなく彼らの血を引いた者たちだった。
彼ら救われない魂たちについての映画がこの日本で作られてしまったことに本当に嫉妬した。
こういう映画が作りたかった。悔しい!!

 ――山岡大祐(脚本家・映画監督 『ロストガール』/
     『朝日ヶ丘の素晴らしき人々(仮)』サンダンス・NHK国際映像作家賞2010グランプリ)


映画を観て「脱がされた」気分になったのは初めてだ。
女性の「鬱屈」を、「純情」を、描いた映画がないとは言わない。
しかし女性の「爆発」を、「狂気」を、「狂った後の他人には辿り着けない境地」を、
ここまで真剣に、そしてダイナミックに描いた映画はあまりないように思う。
脚本家、監督、撮影、それぞれのスタッフの女性に対する誠実な尊敬と真摯な愛情、
そしてヒロインを演じた赤澤ムックの文字通り体当たりの演技の結晶がここにある。
絢子はもう一人の私であり、あなたである。

 ――夏目深雪(ライター)


感情の糸が絡まり合って幸せが見えてこない…。
でも生きるってこういう事なのかもしれないな。

 ――町田マリー(女優)


物語の原点は、人間と人間の関係だ。
なかんずく男と女の関係は焦点になる。心だけでなく身体も。
そんな単純だが奥深いテーマを扱った映画に、最近お目にかかれない…
そう嘆いていたら鮮烈な一作が登場した。あの、日活ロマンポルノの匂いがする。

 ――寺脇 研(映画評論家)


真摯なスタッフと真摯なキャストによる意欲作。
いち早く取り入れた撮影技法には瞠目させられる。必見

 ――わたなべりんたろう
     (ライター・脚本 「週刊朝日」映画欄の星取評など)


傑作です。物語のキーとなる結び目の赤いリボンにドキドキしっぱなし。
色んなものがそぎ落とされて見える純な情愛の世界。
台詞に頼らず芝居の力を信じきった直球の映画。
そんな純粋な姿勢に嫉妬してしまった。
役者がいい。赤澤ムックがもちろんいいが、広澤草も腹立つぐらい良い!

 ――吉田浩太(映画監督 『ユリ子のアロマ』『お姉ちゃん、弟といく』)


「結び目」を観た。
俺の心が掻き乱された。
登場人物の台詞を思い出す。
「本気で好きになったんだよ!」
彼女(彼)たちがスクリーンの中で必死に生きている。
こんな映画、観たことない。

 ――管 公平
     (映画『幽霊さん』監督・第八回おかしな監督映画祭グランプリ受賞)


傑作。
旦那の疑似餌を踏んで俯きになった妻をカメラは延々捉え続ける。
彼女がやっと顔を上げたかと思えばそこに現れるのは痛みを堪え縋るような笑顔だ。
このさりげない1カットのうちにすべてが語られているのだろう。こんな筆致を人は手練れの技と呼ぶ。
そしてアイロン掛けが稼業のはずの夫は外出の度に皺だらけの上着を羽織り恥を曝していく。
愛すべき妻との棲み処には石礫が投げられ、挙げ句の果てには遙か年下の工場主に諭されながらも稚拙な論理に拘泥する。
すべては夫が洗濯物に忍ばせた赤いリボンが発端だ。
こんな駄目男映画を撮り上げてしまう監督の秀逸なる悪戯に拍手だ。

 ――末永 賢(映画監督)


忌まわしい過去から再会した男女の強烈な視線劇が、
まるで映画自体を刺し抜くようにこちらに迫ってくる。
果てにはそれが、犯罪映画の過度な緊張感にまで到達していくその異様な醍醐味・・・。
愛憎ドラマの極点と視線劇の極点が、繊細かつなまめかしいカメラワークによって
むきだしでクロスした<現場>がここにある。

 ――大口和久(批評家・映画作家)


こんなにエモーションで充満した映画を見たことがない。
見つめ合う男と女。本当は一体どこを見ているのだろうか…。
「男と女」という不可思議さ。人間の持っている本性をまざまざと見せつけられた気がする。

 ――松本准平(映画監督)


俳優の演技を見る、その視線がとても、ストイックな映画だなと思いました。
僕は、映画のキャメラマンでは無いけれど、この映画の制作者達に少し嫉妬しました。

 ――茂木一樹(写真家)


存在を呪いたくなるほどに、愛しい映画なのですよ。

 ――山本淳一(映画監督 『MEAT BALL MACHINE』)


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